斬魔大聖デモンベイン 機神胎動

 久々に読みたくなったので読んだ。
 そもそも1度しか読んでなかったので、かなりうろ覚えだったのだ。昔読んだ感想は、「思ってたより詰まんないな」という感想だったが、今読むと、なぜそんな風に思ったのかと思うくらい面白い。
 まあ、機神飛翔デモンベインの影響だろうな。
 話の大筋は二つ、アズラッドの復讐劇とデモンベインの誕生、この二つである。もっとも話がばらけているのではなく、この二つが絡み合って物語を形成する。
 デモンベインの動力である銀鍵守護神機関と獅子の心臓が生み出されるまでの話なのだが、それにアズラッドの敵が絡んでくる。
 話のキーマンは、アズラッドでもなく、デモンベインでもなく覇道鋼造である。この覇道鋼造は大十字九郎のなれの果てだから、実は、この外伝においても九郎が主役といえる。
 アズラッドは復讐を果たした後、人のために残りの命を使うことを選び、そして乾涸びて死んでいく。けど、その思いはアル・アジフの中に残り、そして、機神飛翔で最後の切り札となる。
 アズラッドはアルに、あやまるけれど、謝る必要なんてどこにもない。アズラッドの心はアルの中に確かに存在し、それは希望として芽吹くのだから。
神飛翔してから読むと、感慨深さも数倍だなあ。しかし、これ読まずに機神飛翔するとチンプンカンプンだし。悩ましいなあ。機神飛翔は機神胎動の補完でもあると言ったけれど、相互補完されている作品でもあるんだな。

 アズラッド:ひたすら復讐に生きる復讐鬼。と、本人は思っているが、実は、関係ない人を巻き込みたくない、守りたいと行動する正義の人。その正義の心を覇道に利用されて、お守りさせられたり、邪神と戦わされたりする。結果、復讐は果たすんだけど。死期を悟り、「俺の命どう使えばいい」と言う彼は鬼気迫る。そして、魂すら尽き果てながら尚、デモンベインを起動させる。彼だからこそ、機神飛翔での「デモンベインを信じろ、あれは人間のためのデウスマキナだ」という台詞をはく資格がある。こればかりは、アルも九郎すらも持たない部分だろう。

 覇道鋼造:中身はマスターテリオンに敗れた大十字九郎。しかし、かつての甘ちゃん九郎は成りを潜め、辣腕振りを発揮する。実は真の復讐鬼はこの人。死にかけのアズラッドに「後何度アイオーンを呼べる?」と聞き、「残り1回は自分のためにとっておけ」みたいな、非道なことも平気で言うし、最終的にはアズラッドの命と引き換えにデモンベインを完成させる。アズラッドを味方に引き込むためにエイダを利用し、価値がなくなればあっさり捨てる。デモンベインを完成させ、ブラックロッジに対抗できる手段を整えるために、ほんとに何でもしてしまう。
 どんなピンチでも泰然としているが、最後の希望がたたれたときに萎えてしまうのはやはり、敗れた九郎だからだろうか。

 アル・アジフ:本編とのアルとは別人。おちゃらけら部分がまるでない。しかし、本来の彼女はこうなのではないだろうか。九郎といるときのアルは彼女も知らない自分の側面だろう。本編でアルは九郎に「汝との関係ははじめから感情的なものであった」と言っている。魔を断つという呪詛よりも先に九郎とは感情で接したからこそ、あの関係が生まれたのではないだろうか。しかし、最後に呪いをはいて去っていくアルの姿は寂しすぎる。

 オーガスト・エイダ・ダーレス:書くことあんまりないが、機神飛翔で瑠璃の母だと判明する。