伝説巨神イデオン 完結

 イデオンを一通り見た。2話とモエラが死ぬ話は見逃したのだけれども。
 全体を見ると、確かに悲壮感漂う話なのだが、どこまでも前向きに生き残ろうとしながら成長していくソロシップのメンバーといい、趣向をかえいろんな方法でイデオンを襲い来るバッフクラン、そして終盤は発動したイデの強烈な存在感と、ロボットアニメとしてみても基本は完全に押さえてあると思う。
 ただ、勧善懲悪の爽快感というものが無いのだが。その代わりに、落ちてくる衛星を受けても生き延びる、敵の艦隊を消し飛ばす、彗星を消滅させる、惑星を切る、恒星を消滅させる、その攻撃に耐える、1対数万という三国無双を超える戦い、想像を絶する宇宙規模での破壊という爽快感がついて回る。
 ただ、やっぱ子供受けはしないだろうなと。作画も独特だが、今見ても十分耐えれるし*1哲学的な話、それぞれの正義の戦い、そして、イデの発現でしか分かり合えることの無かった人類。テーマ的には、宇宙に適応した新人類、ニュータイプというテーマを引き継いだ形になる。人は分かり合えるとガンダムでいいながら、実質続編といっていいイデオンでは最後の最後まで人は分かりあえない。
 富野はこのあと人類が分かり合うというテーマは置いとくことになるのは自分の出した結論が気に入らなかったんだろうなあ。それゆえの失敗作発言だろうし。(未知との遭遇的な異文化との接触と異邦人ゆえに戦うしかないといったイデオンでのテーマはダンバインでもう一度やるのだが。そして収集のつかなくなった結末は、イデの発現の如くシーラの力による浄化、バイストンウェルへと帰ろうという結末。イデオンのイデの発現による合一と似たようなものだったわけだが。そうなると、メシアが新たなる人類として旅立ったのと、チャム・ファウが地上に残されるのも似ている気がする。とはいえ立場は違うが)
 アニメでは、ドバとの決裂を持ってイデの発現となり、話が唐突に終わるのだが、これはこれでありかもしれない。この唐突さ、いつでも人類を消せるイデの力の証明でもあるわけだし。
 発動編はアニメの最終話から始まる。そして、語られなかったイデの発現までの部分の戦いが描かれるわけだが、映画版エヴァと同じで、未発表だった40話41話をやっているという雰囲気である。
 内容的にはひたすら殺し合い、何か悪いものでも取り付いたように人がボロボロ死んでいく。ネットを調べれば出てくるが、顔面打ちぬかれて死ぬヒロイン、同じく顔面ずたずたにされて死ぬもう一人のヒロイン、幼稚園児くらいの子供の頭がすっ飛ぶ。などなど残酷な表現オンパレード。徹底的にしたかったのだろうが、もうちょっと何とかならんのかといいたくなるわけだが。ちなみに、残酷に死ぬのは女子供ばかりで、男どもは比較的かっこよく死んでいく。何かいやな事があったのだろう。
 ロボットアニメ的には、超新星のエネルギーを利用した40%で恒星を消し飛ばす苛電粒子砲が登場したり、それをソロシップがバリアで耐えたりと見せ所はたっぷりなのだが。
 総評的には、面白いのだが、妙にしこりの残るアニメだったなあと。
 高校生の時代にこれを見ていたら多分、完全肯定したんだろうが、最近はスパロボ的な勧善懲悪もいいなと思えるようになったので、もうちょっと救いのある話でもよかったのかなと。

*1:最新のアニメでもっとひどいのはいくらでもある