キングゲイナー

 久々にレンタルで見る。前借りた時は新作だったが、今回は1週間レンタル。ゆっくり見ようかと思ったが、まとめて4巻全部見ちゃった。返却して続きを借りてくる。
 あまり話題になってないが、善人になった後の富野アニメで、ガンダムの呪縛に比較的取り付かれていない作品。あと、バイストンウェルにも取り付かれていない。富野監督のにおいはふんだんにするが、だがしかし、意外と暗くならない珍しいアニメ。娯楽に徹したアニメ作らせても上手なんだから、今後はこういうのばかり作って欲しいね。ザブングルの初期にも似ている。あっちほどぶちきれたパワーは無いが。
 これ見ちゃうと、ガンダムやおいの呪縛に取り付かれているシードがいかにつまんないかわかる。
 ボーイミーツガールと言うにふさわしい作品。そういや、Fateがボーイミーツガールだと友達が言ってたが、俺はこっちの方がその部分の出来はいいと思うよ。ガンダムのドモンよりはずかしい告白するのもゲイナーだ。
 主人公のゲイナーは引きこもりのようで普通の学生だし。サラに対する恋心も不器用な恋愛も肉欲的な考えも、富野アニメに出てくるキャラの中ではあからさまに普通。
 同じような引きこもりアムロは、やっぱダメ人間だったし(逆シャアの彼は別人だと思う)カミーユはカルシウム足りない。ロランはいい子ちゃん過ぎる。
 偏った性格はキャラクターの色付け的にはいいんだろうけど。ゲイナーに関してはちょっと自己主張強いどこにでも居る学生っぽいのが良い。下手に欝にもならないし、全体的に前向きな話だ。束縛された社会から解放されて、新天地を目指そうって話だから、そういう風になりやすいんだろうけどね。
 後半の絵の崩れ具合(10話過ぎたあたりから、ちらほら怪しい絵が登場する)がちょっと残念かなあ。最初の方の話の描写具合がすばらしかっただけに。
 結局、オーバーデビルの全てもわからないし(ある程度はわかる)キングゲイナーの飛び抜けすぎた性能の秘密もわかんないまま終わるけど、とくに問題は感じなかったなあ。完全に旅の終わりまで描かず、もうちょっとでゴールってところで終わらせたのがいい余韻を与えてくれた。
 表の主人公がゲイナーなら、裏の主人公がゲイン。1話のタイトルもゲインとゲイナー。
 富野作品では、Zガンダムが一見カミーユが主人公で実はシャアが主人公だったように、この作品も二重の主人公を立てている。といっても、ゲインの過去やこだわりは、あまり描かれずに終わってしまうのは残念だ。
 ただ、ゲインは凄惨な過去を背負っているのに、それにこだわっていることをあまり表面に出さない。シャアのように、人間に絶望したり、人に責任をなすりつけたり、あまつさえ、自分より年下の少女に母性を求めるようなことはしない。
 まあ、シャアの生真面目さと、ゲインのいい具合のいい加減さの違いだろうけど。
 裏の主人公は裏のままってことで終わってしまった。
 いくらでも続きが作れそうな作品だが、むやみに大量生産はして欲しくない作品でもある。まあ、ブレンほども話題になってないからそれは無いかもなあ。
 でも、面白いアニメだと思います。富野アニメはあまり人には薦められないけど、これと∀ガンダムは万人に薦められると思う。
 しかし、子安武人は、∀もキングゲイナーでも、壊れ役だなあ・・・。二枚目に見せかけて情けない役ですな。それに比べて、妹カリンのしたたかさが笑える。
 珍しく人死にが少なく、またあまり嫌らしいキャラも出てこない珍しいアニメと言える。その反面、小悪党ばかりなのもちょっとだけど。でも、世界滅ぼすとかそんな話より、売上減るから逃げるんじゃない、とか、新天地を目指すんだとかのほうが分かりやすい話だよな。