スパイダーマン3 ネタバレあり

 スパイダーマン3見てきた。
 Movix橋本が満席になってるのをはじめてみたぜ。
 よくよく考えたら今日公開日+1日だったな。映画1000円だったぜ。時間つぶしで漫画喫茶にいたのでトントンだが。
 ネタバレ無しの感想を書くなら、
 面白かったが、面白さだけならスパイダーマン2の方が上だと思う。もっとも、スパイダーマンが好きな人なら楽しめると思うが。ネタバレ無しならこれくらいしかかけないよな。あと、先週金曜ロードショースパイダーマン2を見たが、やっぱCGが進化してるのもあるが純粋にこの作品は映画館で見たほうがいいね。ジェットコースタームービーといっていいが、幕間も相変わらずきちんと描かれている作品なので、話にそれほど無理は無いし。まあ約一名除いて。
 以後ネタバレあり+アホみたいに長いので、見たい人だけ続きを読むを押してちょ
 サンドマン、二代目グリーンゴブリン、ヴェノムと悪役が3人も出てくるので比較的展開は速い。特に、グリーンゴブリンは出てきて即退場するから最初どうするのかとおもった。
 全体を通して評価するなら1から引っ張ってきていた伏線の回収。これに尽きる。
 そのために、1の時からハリーとの絡みを永延と描いていたわけだし。また、ベン・パーカー殺害にかんするピーターの感情の整理をつける話でもある。もっとも1で強盗犯をピーターは追い詰めて間接的に倒してるのだが。ちょっとこじつけっぽいがうまく話を作っていたとは思う。
 そんなわけで、1から張ってきたものの結末という部分をどうしても描くので、新キャラに関する描写はどうしても薄くなる。特にヴェノムと中身の新聞記者エディに関してはどうしてもただの悪役となってしまった。とはいえ、彼の台詞には光るものがあったので、その辺は鳥肌が立ったが。
 スパイダーマン2という作品はドック・オクの悲劇を最初から描き、そして自らの手で決着をつけさせる、また、スパイダーマンが電車を止めるシーンと盛り上がるシーン。また、ヒーローの挫折と、ピーターと悪役に関してこれでもかといわんばかりに描かれている。それゆえに、ヒーローとして復活するシーンも盛り上がるし、かといって妄執に取り付かれたドック・オクの哀愁漂う最期があるわけである。
 それに比べると、やはり詰め込みすぎの感はある。特にサンドマンの結末は、ピーターの復讐心には決着ついているものの、悪役としてのサンドマンにはまったく決着がついていない。
 さて、1キャラ1キャラについて感想を。

 ピーター(スパイダーマン):今回の作品を一言言うなら、身から出たさびである。敵は自分とはナイスなキャッチコピーだ。サンドマンの誕生も間接的にピーターが原因の一つ(ただし、これを彼の責任にすると風が吹けば桶屋が儲かる理論になってしまう。)だし。ヴェノムに関してはエディも多少は悪いが、人生台無しにされるほどのことをしているわけでもない。グリーンゴブリンに関してはピーターの立場は難しいものがあるのだが。ピーターも確か、決着直前までゴブリンの正体を知らなかったはずだし。で、MJにプロポーズ失敗するのも彼が違う女の人とキスするのが原因だし、調子乗って失敗するのもそう。とにかく、ピーターは相変わらずダメな人としかいいようがない。もっとも、それが魅力なんだが。スーパーマンのクラークケントとは一味違う。あちらは普段も完璧超人だが、わざとぼんくらの振りをしてる嫌な奴だし。
 残念ながらスパイダーマン3というのは彼にとってのハッピーエンドではない。ヴェノム誕生の原因も彼だし、そのおかげでエディを死なせている。和解したハリー(グリーンゴブリン)も死なせている。叔父の仇は取れない(とはいえ、あの最後はありだとは思う)。MJとはよりを戻すが、それはいつものことだ。ちょっとほろ苦い作品というのは1から共通したものであろう。この「ヒーローであろうともどうしようもないことがある」という部分が、このシリーズの魅力だと俺は思っている*1わけだが。

 ハリー(二代目グリーンゴブリン):ついにスパイダーマンの正体を知り、グリーンゴブリンとなりピーターを襲うわけだが、ピーターは一度先代と戦っており、相手の戦い方を知っているわけで、結局は敗れてしまう。その際、頭を打って軽い記憶喪失に・・・。最初、頭を打つシーンとか結構笑える仕立てだったのでギャグかと思ったら実は重要な伏線だった。記憶喪失の彼は父の死以後の記憶が無く、ピーターとはかつての親友としての関係が戻る。そして、彼はつぶやく「あいつは親友なんだ。あいつのためなら死ねる」あの何気ない一言が最後の伏線となっている。
 ピーターと破局寸前になったMJとくっつきかけたある日、彼は記憶を取り戻し、ピーターからMJを奪い、彼を絶望に叩きのめす。おりしも、好戦的になるという特性を持ったブラックスパイダースーツを持っていたピーターは怒りに任せハリーと対決。強化されたスパイダーマンはグリーンゴブリンを圧倒して倒し、ハリーの顔に消えようの無い傷を残す。
 ブラックスパイダースーツを捨てたスパイダーマンサンドマンとヴェノムの挑戦状が届く。ピーターはハリーに助けてくれと頼みに来る。当然、彼はピーターを拒む。そして、執事のバーナードが彼に父親の死の真相を話す。実は彼はスパイダーマンが犯人ではないと知っていたのだ。さっさと言え!。この作品最大の突っ込みどころである。彼がとっとと言っていれば、ハリーの顔に傷もつかなかったし、彼らが殺しあうことも無かったのだ。ハリーは真相を知り、かつての友情を取り戻しピーターを助けに向かう。このあたりの伏線として高校時代の関係を記憶喪失時代に取り戻していたという伏線が生きるのだろう。すべてのわだかまりを捨てたハリーとピーターは協力してサンドマンを倒す。そしてヴェノムに追い詰められたハリーをかばって凶刃に倒れる。
 彼は満足して死んでいく。ピーターは彼にいつもかばわれていて結局何もしてやれなかったことに涙する。彼の葬儀で、彼から学んだことをピーターは反芻する。この後MJとより戻すシーンがあるのだが、事実上この葬儀シーンがスパイダーマン3のエンディングといっていいだろう。
 親友と父の仇というどうしようもない苦悩を背負ってしまったハリーにうまく決着をつけたと思う。殺す必要があったのかどうかは賛否両論ありそうだが。仮にスパイダーマン4があったとして、スパイディ&グリーンゴブリンというコンビの活躍も見たかったという気はするのだ。もっともマーベル的にありえないことなのかもしれないが。

エディ(ヴェノム):ピーターと新聞社の席を賭けて対決する。スパイダーマンの悪事を取れというのが課題だったのだが、彼は写真を捏造してしまう。ブラックスパイダースーツを身につけ、好戦的になっていたピーターはその捏造をばらしてしまう。エディはその一件で恋人も新たな職も失ってしまう。しかも捏造記者として紹介されてしまったため、その後の職も奪われる。
 教会で懺悔せずにピーターを殺してくれと願う彼の前にブラックスパイダースーツが振ってくる。その好戦性に恐れを抱いたスパイダーマンが無理やり脱いだものが偶然に彼の前に落ちてきたのだ(落ちてきたというか取り付かれたというほうが正しいが)ヴェノムの誕生である。彼は復讐心のままピーターに復讐しようとする。ヴェノムに取り付かれるときにスパイダーマンの正体がピーターだということを彼は見ていた。MJを誘拐し、彼女を盾にピーターを誘い出す。サンドマンと共闘してスパイダーマンと戦うが、サンドマンはピーターとハリーのコンビの前に敗れてしまう。それでもヴェノムはその圧倒的な能力でスパイダーマンを追い詰める。ピーターはヴェノムがエディであると知り、戦いの中彼に忠告する。そのスーツを着ていると自分を失うぞと。
 全てをスパイダーマンに奪われ、彼への復讐がすべてとなったエディ。正義の象徴であるスパイダーマン。自分を貶めたのはそのスパイダーマンの正体。その彼に正義を諭されて彼は叫ぶ。「それなら悪でいい!」この作品で屈指の名台詞だと思う。もっとも逆恨み的な部分があるのも事実ではあるが、ヴェノムに取り付かれていたとはいえ、ピーターの仕打ちは確かに度を越していたのも事実だ。
 この台詞はいつか自分の小説で使おうとしてた台詞でもあるのでちょっとやられたよなあ。まあ、どうせ発表なんてしないからいいんだが。
 この台詞とあと、サンドマンの事、これらはスパイダーマン3の恐らくテーマであろう「人それぞれの真実」というものを現している台詞ではないだろうか。
 結局、ヴェノムは倒され力に固執したエディは死んでしまうのだが。で、ヴェノムって結構人気キャラだったと思うのだが、こんなにあっさり殺していいのか?

サンドマン:殺しても死なないに等しいらしく結局、作中でも決定打は与えられない。一時的な活動停止に追い込む程度しか出来ない。ある意味最強の敵である。
 彼は娘の病気を治すために強盗に走る。それが例のベン・パーカー殺害の一件である。ピーターは彼が望んでベンを殺したと思っていたが、彼自身にとってかなり不幸な過失であったともいえる。ベンの死という事実の前に二つの真実が存在するわけだ。ピーターの真実とサンドマンの真実の二つである。まあ、他にこの手の対立は先代ゴブリン殺害の一件でもあるわけだ。無論、この2件は結果非常に似た齟齬である。そして、一つの死に対する認識が違うのは当然である。ピーターはその事をハリーとの一連の出来事から学んでいた。そして、それを許すことが出来る事も親友から学んでいた。ヴェノムとの戦いが終わってから姿を現したサンドマン。ベン殺害の真相を聞いた彼はそれが本当の事であると理解し彼を許す。罪の意識を忘れられなかったサンドマン。娘の命を助けるという正義を振りかざしても根が善人である彼にとってその一言が救いとなるのだろう。とはいえ、普通に去っていくので彼の今後に関してはどうなるのか・・・。続編があるとするなら、ピンチになったスパイダーマンを助けに来るという展開もありそうだが。

 スパイダーマン全編を通して語られる、真実の違いと、力持つものの有り様。愛するものを失った時人はどうすべきか。愛ゆえに人は道を違う。けれども正しい心があれば過ちは訂正される。
 この作品のすばらしいところは3部通して常に主張が一定している事ではないだろうか。

 と、出来る限りの言葉で誉めてみました。
 面白い事は面白いが、やっぱ2のほうが好きかな。何しろ、これらのテーマは1と2である程度語りつくしている事でもあるわけだし。まあ、違うこと言われるよりはマシか。
 単純な勧善懲悪ものではないのが最大のポイントだが、ヴェノムだけは小悪党だったのは、時間の都合上仕方ないのかな。サンドマンに関しては短い時間でうまく語れているだけにもったいないと思うが。

 ちなみに、最大の見所は、ブラックスパイダースーツに取り付かれた黒ピーターだと思う。

*1:この優れた力を持っていてもどうしようもないというような設定は基本的に俺好み。これが行き過ぎる例があやかしびとの九鬼先生なわけで。