クロちゃんのRPG千夜一夜

 つっても読んだわけじゃなく、思い出したので読みたいなあって話。
 どんな本かというとTRPGに関する四方山話を書いた本。昔あったコンプティークって雑誌に毎月連載されてたコラムで、コンピューターも持ってないのにコンプティークを毎月買ってたなあ。これを読むためだけに。
 復刊ドットコムで復刊交渉に入ったとも聞いたがはてさてどうなってるのやら。もし復刊するなら、未収録分もあわせて出して欲しいな。
 で、どんな内容かと言うと、ほんとにクロちゃんが経験したTRPGでの要素やうんちくを披露していく話。
 というのも、これが連載していた時期と言うのはTPRGの黎明期みたいなもので、日本でTRPGというものが浸透していなかった時期でもある。たしかD&Dと言うゲームに日本語版がはじめて発売された時期じゃないかな。小学生の俺も興味を持ってて、3000円くらいするスターターキットを買ったが理解できずに放置したと言う苦い思い出もあるゲームだなあ。
 その後、D&Dがよくわかる本というのをクロちゃんこと黒田幸弘さんが出して、それを読んで、この人のファンになったわけで。その流れでその後出版されたクロちゃんのRPG見聞録を読んで千夜一夜にはまったわけだ。
 まず、TRPGというのが世に浸透しておらず*1、どういうものかから理解しなきゃいけない時代だったしねえ。
 また、この人の文章が読みやすくわかりやすく親しみやすくて面白い。最近、この手のエッセイを書いてないみたいだけど、こういう人こそHP持ってそういうコラムを連載してくれたらいいのにねえ。
 で、千夜一夜に話を戻すんだけど、この話しに出てくる登場人物がどれもこれも二癖くらいある。基本的にクロちゃん体験談を話す。この体験談、反面教師になるべく困った人が沢山出てくる。行動そのものは面白いが、TRPGのプレイヤーやゲームマスターとしてはどうよ?と首をかしげるような人たちが多い。クロちゃんは自分の体験から面白おかしく話すため、こんな困ったチャンのプレイヤーなんているわけが無いと読んでた当事は思ってた。あくまでTRPGプロパガンダでもあったわけだし、読者にTRPGに興味を引かせるために誇張して書いてると思ってたのだが…。
 実はTRPGをやればやるほど、そういう困ったちゃんが実際にいることがわかるのだ。特に不特定多数とTRPGを経験すればすぐわかる。
 そう、コンベンションに行けば、自分の薀蓄とルールを振りかざし、ゲーム的なルールの溝をついて人の揚げ足を取る連中が実は結構いるのだ。
 というか、俺も一度だけ、コンベンションでそんなことをしたことがある。あの後数日か数週間してから、何気なく千夜一夜を読んだとき、自分が恥ずかしくなったのを今も覚えている。
 その後、数度コンベンションに参加したが、暴走しなくなったように思う。
 特に、マスタリングの穴をついたり、マスターよりルールに詳しい人がルールを盾にマスタリングがおかしいとマスターを非難する人が多いこと多いこと。
 TRPGっていうのはマスターとプレイヤーの駆け引きでもあるが、同時に予定調和の世界でもある。特に、面識も無い人同士が始めてプレイする場合はそれを理解しなければいけない*2
 クロちゃんのRPG千夜一夜とクロちゃんのRPG見聞録は一見面白おかしく書いてあるが、実際はTRPG経験者からの貴重な忠告でもあるのだ。
 そういう意味で、この本は古いけれどもTRPGをやっている人、これからやろうとしている人が是非読むべき本でもある。面白おかしく書いてあるけれどもRPGに対する心構えと言うものがさりげなくちりばめられているのである。
 今、世の中にTRPGリプレイなるものが多数あり、一見、TRPGの入門が多いように見えるが、決してそうでは無いと思う。実際、俺の好きなTRPGのリプレイのバブリーズやへっぽこーずはどちらもTRPGのモデルには向いていない。前者のバブリーズはあまりにルールの裏をつきすぎるし、へっぽこーずはゲームとしての面白みよりもキャラクター性の面白みを追求している。どちらも結局はベテランのTRPGの風景なのだ。へっぽこーずは素人っぽくやってるがそれも演技だろうと思われる。どちらも、読み物としてはすこぶる面白いが、TRPGの入門書にはなってないのだ。
 俺のようにTRPGに親しんでいた人間はリプレイ読んでTRPGしたいなあと思うが、やったこと無い人がそう思えるとは思えない。
 逆にクロちゃんの書物はTRPGをしたくなる、そういう意味で入門書となっていると思う。
 まあ、それ以前に、純粋に読み物として非常に面白いと言うのが一番ポイント高いけどね。あくまでTRPGというもの多少理解してればの話だけど。

*1:今でも万人が知っていると言うものでもないがそれでも当時よりははるかに地位を築いていると思われる。本場アメリカではTRPGがブームだった時期は映画にそのD&Dをやってる子供の姿が描写されるほど有名だったようだ。映画はE.Tね

*2:俺はそれを理解してなかった。それまで以下に知り合いに甘えてゲームを馴れ合ってプレイしていたことか。それが悪いわけではなく、初対面の人間にそれをするのがいけないと思う