1018年7月

新京極邸 居間にて
「夕顔と言う。お前の妹だ」
 青い髪の少女が豊代の前に座っていた。
「豊代と申します。よしなに」
 夕顔と呼ばれた少女は、豊代にあわせて頭を下げた。
「夕顔って言います。よろしく。お姉ちゃん」
 初々しい態度に、豊代の頬が思わずほころぶ。
「で、夕顔はどのような役割をするのですか?」
「これだよ」
 そういって、鬼切丸は弓を打つ格好をして見せた。
「弓使いですか」
「お父さんとお姉ちゃんの援護をするようにって言われました」
「そうですわね・・・」
 今のところ二人の戦い方は、二人が前線に立ってひたすら殴りあうというものだ。結界印や符の力を借りてはいるものの、根本的には殴りあうことしかやらない。おかげで、敵の大将の前に雑魚がいた場合、対象を倒すのにその雑魚すべてを倒さなくてはいけなかったのだ。弓があれば、大将だけ狙い撃ちすることも可能である。
「まあ、こいつが戦うようなことが無いのがいいのだがな」
 それは無理だろう。大江山が開山するまであと4ヶ月。普通の人間ならばまだ、乳から離れることすら出来ない歳月と呼ぶのがおこがましいほど短い時間だが、新京極の人間にしてみれば、十二分に戦力となれる期間なのだ。
大江山へは、3人で向かうことになるのね」
 居間を去った父は言葉に出しては言わなかったが、そう考えていることが明白であった。


白骨城にて
「また、ここですか・・・」
 うんざりしたような表情で豊代がつぶやいた。
 今月もまた、白骨城に足を踏み入れた新京極の二人。夕顔はまだ、戦いに出るには速すぎるため、留守中一人で稽古に励んでいる・・・はずである。
「ここには、速瀬という術があるらしい。どうしても手に入れたくてな」
 現在、新京極に伝わる術の数は極端に少ない。単純に戦って経験をつむだけでなく、術を増やすこともまた一族の強化につながるのである。
 また、先月手に入れた竜骨の槌という武器が珍しいものだったのか、ずいぶんと高値で売ることが出来た。
 町の復興や朱点討伐のために金はいくらあっても足りないというのも実情である。一匹も多く鬼を狩り、金を集め、術を手に入れる。まさに一石三鳥を狙うのである。
 そんなことは豊代もわかって入るのだが、やはりこの白骨城に対する嫌悪感が先にたつ。
 五の丸にたどり着いた二人は、先月の殺気が無いことに違和感を覚えた。
「一度倒せば、二度と現れないのかもしれませんね」
「だといいのだが」
 二人は、早足で五の丸を後にし白骨城を駆け上っていく。五の丸を越えたあたりから、敵が極端に強くなり、二人は疲労を強いられた。それでも、二人は月末にはかなり上にたどり着いていた。
「お父様、あんなところにつづらが」
 だだっ広い部屋のど真ん中に青いつづらがちょこんとおかれていた。
「罠・・・だな」
 豊代はうなずくと、奥の観音開きの扉の前に立つ。そして力を込めて押したり引いたりしてみる。しかし、扉はビクともしなかった。
「罠にかかってやらねばならんか」
 その様子を見た鬼切丸はためらい無くつづらに手を伸ばした。とたんに周囲にあった殺気が膨れ上がる。先月戦った恨み足と同様の殺気だ。
「来るぞ!」
 白骨城の左右から、恐ろしいまでに大きく長い腕の骨が襲い掛かってきた。
「二体か」
 右手に鬼切丸は刀を振り下ろす。
 ギンッ。
 手に痺れが走ると同時に、信じられないものを見た。鬼切丸の太刀が当たった部分の骨がほとんど欠けていない。むしろ、刀のほうに刃こぼれが生じていた。
「クソ!」
 繰り出される右手の一撃を受けつつ、後ろに下がる。
「攻撃のほうはたいした事無いが、何て硬さだ」
 右手の繰り出した一撃は恨み足の一撃と比べても数段下。数発食らっても死に至ることはないと思われた。
「お父様、左手の方はさほど硬くありませんわ」
 薙刀を振り回し、左右の腕に同時に切りつけていた豊代の声に鬼切丸は大きくうなずいた。
「よし、左腕から叩き潰す」
 豊代の言ったとおり、左手はひどくもろかった。
「このまま、押し切って・・・」
 二人は右手をいなしながら左手に同時に襲い掛かる。だが、その次の瞬間、大きくなぎ払われた左手に二人は弾き飛ばされた。
「く、今の一撃は・・・」
 左手の一撃は右手のものの二倍ほどの破壊力を秘めていた。しかも、二人を同時になぎ払うほどの範囲で。
「なるほど、防御特化の右腕と・・・」
「攻撃特化の左腕というわけですね」
 特徴は掴んだ。ならば、確固撃破するのみ。
 ここに来るまでに術はかなり使っており、長期戦は不利。多少の怪我を覚悟して、二人は、左腕に襲い掛かる。攻撃力の反面、非常にもろい左腕は、二人の猛攻の前にあっさりと砕け散った。
「後は右腕のみ」
 交互に武人を欠けていく。今の攻撃力では右腕を砕くことは難しい。右腕は武人をかける二人を妨害するように襲い掛かってきたが、いかんせん破壊力に欠ける。
「この勝負、もらった!」
 鬼切丸が武人で上昇させた一撃を右腕に叩き込む。先ほどはまったく歯が立たなかった右腕に大きなひびが入った。
「やった、勝てる」
 豊代の歓声が上がる。右腕はのたうつように動き、まるで叫びを上げるような動きを見せた。無論声など出ない。だが・・・
「何?!」
「うそ、インチキ」
 なんと、突然、左腕が現れた。
「こいつら・・・」
 こいつらに穴など無い。攻撃力の左腕、防御力の右腕。右手は倒すまでに時間がかかり、左手はどんどん体力を削ってくる。左手は即効で倒せるが、右腕が左腕を呼ぶ。また、時間をかけて右腕を先に倒したとしても左腕が右腕を呼ぶだろう。
「二体・・・同時?」
「お父様、私に案があるわ。とにかく、右腕を狙って」
「よし、わかった」
 右腕と左腕同時に相手しつつ、右腕を攻撃する父を尻目に、豊代は残った技力を使って自分に武人を重ねがけする。もはや猶予は無い。父も自分も術は尽きた。
「お父様、下がって!」
 父の居た空間に豊代は飛び込む。その先には砕けかけた右腕と、まだ、無傷の左腕。
「これでも・・・食らいなさい!」
 手にしたブンブン刀は豊代の持つ風の力を吸い上げ、緑に光り輝く。そして、武人により強化された一撃が、二つの腕を同時に切り裂いた。
「よし!」
 小さく、勝どきの構えをとる豊代。
「油断するな!」
 同時に、父の叱責が飛ぶ。
 敵の方向を見ずにただ、勘だけで後ろにとんだ。
 致命傷は免れた。それでももはや回復する手立ての無い二人には厳しい一撃だ。娘はまだ動いている左腕に弾き飛ばされ、父はそれに巻き込まれる形で崩れ落ちた。
「倒し切れなかった・・・」
 左腕と右腕を同時に破壊する手はずだったのに。
 このままでは、左腕が右腕を呼ぶだろう。そうなればこちらに勝ち目は無い。最期は父の腕の中で。諦めの中、ふと、父の左腕にはめられている腕輪に手が触れた。
「お父様・・・」
 父は朦朧とした意識を奮い立たせ、剣を杖に立ち上がろうとしていた。
「腕輪が・・・」
 娘の声に、当主の腕輪に目を落とす。腕輪が淡く光っていた。
「これは、まさか、父上・・・力を貸してくれると?」
 無念の中、息子を残して散っていった鬼切丸の父は、死してなお息子に力を貸そうとしている。鬼切丸はもはや覚えていない父のぬくもりを感じた気がした。
「新京極源太! 一族に、力を!」
 鬼切丸は左腕を天高く突き出す。腕輪の光は天を突き、そこから一人の武人が現れた。武人は鬼切丸を一瞥し、軽く笑みを見せた後、左腕に向かって飛び掛る。
 そして、通り抜けざまに三度、左腕は源太の霊に切り裂かれて砕けていった。
 倒れたままの豊代。慢心相違の鬼切丸。二人はしばし、呆然と立ち尽くしていた。
 今月の討伐はここまでだと、豊代が思っていた時、父がボソリとつぶやいた。
「俺は、今まで一人で戦おうと考えていた。でも、違うんだな。お前がいて、夕顔がいて、イツ花がいて、そして、父上がいる」
 鬼切丸はそれ以上何も言わなかった。
 父が何を言わんとしているのか。豊代は想像の範囲でしか悟ることが出来ない。でも、父の考えに多少の変化が出てくるのではないかと思い始めていた。


 17000投資して、商業をレベル3に。子供到着。弓使いにして、夕顔と名づける。とにかく体がすごい。私脱ぐとすごいんですって感じで。ただし、術に関してはまるで期待できない。
 風ノ指輪を買ってブンブン刀の威力の底上げをする。豊代、風の技の素質は高いのだが、若いせいかどうも伸びがイマイチだ。
 今月も白骨城に速瀬が取れなかったためである。ついでに竜骨の槌も狙う。
 竜骨の槌は1個しか取れなかったが、目的の速瀬入手。あと左カイナと右カイナも倒してくる。運良くアイテムが3つ重なって2倍来たので、たくさん奉納点もらえた。
 今月の奉納点2500くらい。覚えてない。
 そろそろ、当主の成長が止まり始めた。体の水はまだ伸びるが、火の体の上がりが小さくなってきちゃった。薬がいっぱい手に入ったので、大江山まえにおそらく成長が止まってるであろう当主に使うことにしよう。
 しかし、今月の小説部分。えらい長くなっちゃったな。