1018年11月 血戦!朱点閣!!

 そこは祭壇のような場所だった。
 ひたすら広い空間の最深部に、ピラミッドを連想させる高台。そこの上の様子は下から伺うことはできない。
 新京極の3人は、その高台の麓からそれを見上げた。
「いよいよだね」
 緊張をごまかすように、最初に声を出したのは一番若い夕顔だった。
「おそらく、この高台の上に朱点はいるのでしょう」
 夕顔はそれに頷く。
 が、鬼切丸は首を縦に振らなかった。
「さて、どうだろうな。父上は、朱点に不意を打たれたと聞いている・・・、いや、そう覚えている。おぼろげだが、両親は朱点と戦うことなく敗れた筈だ」
「鬼の大将ともあろうものが、ずいぶんとせこいのね」
「決して、油断するなよ」
 鬼切丸の助言を最後に、3人は階段を上る。
 その一番上まできたとき、巨大な赤鬼と天蓋付の寝所が見えた。
「貴様が朱点童子か」
 静かに放たれた言葉は質問ではなく確認だ。鬼切丸の脳裏には、この鬼の記憶がまざまざと残されている。
 それは原初の記憶。母と父の腕に抱かれたことよりも鮮明な記憶だ。
 鬼の顔が歪んだ。それが頬をつり上げた笑みだとは誰も気がつかない。
「ずいぶん前に男と女が来て以来、誰も俺を訪ねてくれねェから、ちょっと寂しかったゼ」
 鬼切丸の問いに答える用に、鬼は答えた。
「そうだ。俺が朱点童子様よ」
 3人を馬鹿にしたように眺めていた朱点の瞳に好奇と嫌悪の色が浮かぶ。
「おンやッ………!? その額の光は!? まさか、あの時のガキ……?」
「流石に頭の悪そうな貴様でも、1年程前のことは覚えているらしいな。そうだ、俺があの時のガキだ」
「ああ、覚えてるゼ。ククク…。そういうことか!! またあいつら、こっちの世界にチョッカイだしたのかい!? ククク…懲りねえなあ…」
 さもおかしそうに鬼は笑った。笑って笑って急に冷えたように笑いが止まる。次の瞬間そこには赤鬼と呼ぶにふさわしい形相に変わっていた。
「来るぞ!」
 その表情で、鬼切丸は鬼がその気になったことを悟る。
「たとえ!鬼でもなあ!!」
 その鈍重そうな見た目と裏腹に、鬼は恐ろしくすばやかった。先ほど戦った石猿田衛門と同等かそれ以上の速度。鬼の大将にふさわしい実力といえた。
 鬼切丸の頭ほどの大きさの拳が振り下ろされる。それは武芸などの洗練された拳ではなく、ただ荒れ狂う獣の拳であった。そのげんこつは鬼切丸の胸にぶち当たる。突き抜けた激痛は自身の体の骨がへし折れたものだと胡乱な頭で鬼切丸は理解した。
「1度生まれりゃ、命はてめェのもんだ」
 父親の援護に駆けつけてくる二人に向って、朱点はその大きな口を開いて息を吐く。想像を絶する腐臭が充満し、刃に錆びが浮く。
「そっちの勝手な都合で、死ねるかよ!」
 朱点は信じられないほどの跳躍を見せ、そのまま、巨大な尻で3人を押しつぶそうとした。
 最初の一撃を喰らい、胸を抱えてうずくまっていた鬼切丸は、巨大すぎる尻を辛うじて避ける。そして、渾身の力をこめて朱点の柔らかそうな腹に切り上げた。
 刃と肉が触れた感触はまるで布団を切ったような手ごたえだった。が、一定量刀を押し込むと、強靭な筋肉と弾力のある肌が押し返し来る。
 見た目とは裏腹に強固で柔軟な皮膚である。ある意味で堅いだけよりも更に性質が悪い。
 それでも鬼切丸はその刃を強引に振りぬいた。
 浅手ではあるが、朱点の腹から鮮血が迸る。
「俺を見くびるなこの糞デブが。俺を名前を知ってるか?」
 全身の骨のあちこちにひびが入っており、口からこぼれる血液は彼の内臓の破損を示している。とても平然と立っていられる傷ではない。しかし、鬼切丸の足取りはしっかりしたものである。
「しらねえな、てめえ見たいな、操り人形の名前なんて知るもんか!
 朱点は再び豪腕を振るう。しかし、それは陽炎を掠めるばかり。
「ち、結界印か」
 腕を振り回して隙だらけの朱点の背中に刃が振り下ろされる。壁のように固い背筋でその一撃を受け止めるものの、朱点は地面に叩きつけられた。
「だったら、覚えておけ」
 そこには一人の鬼が立っていた。
 赤い紅い朱い瞳の鬼が。
「ひ…お前は…」
 朱点の顔に怯えが浮かぶ。
 鬼切丸は大上段から刀を振り下ろした。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
 醜い絶叫が朱点閣に響く。
 わずかな時間の後にベチャリと何かが地面に落ちた。そして、血の雨が降る。
「お、俺の腕がああああ」
 朱点はとっさに腕で顔を庇った。その振り上げた腕に刀が食い込み、そのまま腕は切り飛ばされた。
 残った左腕を振り回し、朱点は右腕に駆け寄ろうとする。
「させない!」
 今まで術で父をサポートしていた夕顔の弓が襲い掛かった。が、朱点を止めるほどの勢いは無い。
「えい!」
 切り飛ばされた腕に先回りしていた豊代が迎え撃つように朱点に切りかかる。
「邪魔だ、小娘!」
 しかし、闘牛のように頭を振り回した朱点の角に弾かれてしまう。そして、そのまま体当たりを喰らい吹き飛ばされた。
「ぐへへへへ、こんなことで死んでたまるかよ」
 朱点は拾った右腕を傷口に押し当てる。傷口が湯気を上げた。
「嘘…」
 姉に駆け寄った夕顔が見たものは瞬時に腕が繋がった朱点である。
「こんな化物…どうやって倒せばいいのよ」
 夕顔は姉を治療しつつも顔面が蒼白になっていた。
「なるほど、おめえらは確かに、あの方と同じになるかも知れねえな」
 完全にくっついた右腕をぶんぶんと振り回しながら朱点は吠える。
「だがよ。まだ弱ええ。今なら、俺でも殺せるな。どうする? この通り生半可な攻撃じゃ俺は殺せねえぜ」
 朱点閣に鬼の笑い声がこだました。
 そう、笑っているのは赤い鬼ではなく、赤い瞳の人の形をした鬼。
「そうか。そうか。切っても切っても死なねえってか」
 口はまるで裂けたようで、その口から吐かれる吐息は血なまぐさくて、どちらが鬼か、娘たちにはもうわからなかった。
「ならよ、てめえが死ぬまで切るだけだ」
 鬼切丸が切る。
 血が舞う。
 今度の一撃も浅手ではない。しかし、切った先から回復していく。
 しかし、切る。
 治る。
 切る。
 治る。
 切る。 
 斬る。
 治る。
 切る。
 切る。
 斬る。
 治る。
 段々、治るのが間に合わなくなっていく。
 もはや朱点からの回復は無い。鬼切丸はひたすらに朱点を斬りつける。
「ほんとだ。全然死なねえのな。こりゃ、いい。いつまで死なねえのか試してやるからよ」
「ひ、た、助けてくれ」
 鬼が懇願した。
 そこで初めて鬼切丸は動きを止めた。
「そりゃダメだな。俺の名前を知ってるだろ?」
「源次…だろ?」
 鬼切丸は犬歯を剥き出しにして笑った。
「違うな。俺の名前は鬼切丸」
 そして、全体重を乗せた刃を朱点の臍につきこんだ。朱点の腹は太すぎて、根元まで刀を埋め込んでも背中から突き出ることすらない。
 ぶちぶちぶち、ぐちゅぐちゅぐちゅ、朱点の腹筋と内臓がちぎれる音が響き渡った。鬼切丸は全体重を刀に乗せ、朱点の臍から下へと切り裂いた。
「その名のとおり、この世の鬼は全て切る」
 全身を返り血で紅く染め、赤い紅い朱い瞳の鬼は、朱く染まって、笑い狂う。
「あれが…お父さん…」
 夕顔が震えながら呟いた。豊代は震える妹の髪を撫でながら、そんな父を静かに眺めていた。
 


 そんなわけで、思いっきり趣味に走ってみました。じゃなくて、朱点撃破。正直、何でこれで勝てたのかわからない。もっと楽勝状態でも負けたのにねえ。
 突入時点で、技がほとんど残ってない、健康度も下がり気味。まあ、健康度はこの時点で関係ないけど。
 で、鬼切丸以外、何もしてないようですが、裏で武人、結界印、光無しの効果の符といろいろやってます。面倒だから割愛で。
 正直、喰らった攻撃は、最初のげんこつと、溜めるげんこつを豊代がくらっただけ。何とか生きてたけど、豊代、この突撃だけで2回死に掛けてるんだが。石猿でも逝きかけたし。
 円子が2回ですんだのが勝因かな。しかし、削った先から回復するので、小説部分は誇張でも気分はどんどん回復するそんな感じ。
 光無しの効果の符? もちろんつかったけど、まったく聞きませんでした。もってくだけ無駄だった。
 とことん作戦はずれたのに、何とか勝てた。何故だろう?
 負けてもいいや、せっかくついたし、符を試そうと言うつもりで戦ったんだけどなあ。
 とりあえず、初代当主で朱点撃破達成です。検索すれば早解き関係のHPではもっとああしたほうがいいこうしたほうがいいと有りますが、結局、結界印が買えて9月くらいまでに商業がレベル4になってれば結構適当でも勝てるようです。まあ、大江山は20回以上挑戦してるんですけどね。