クロノベルト 復讐するは神に無し

 クロノベルトの九鬼先生ルート。まあ、九鬼先生が、ゴルドロックに紛れ込んで、果たし損ねた復讐に走るという話。
 今回、発売日直後だし、超ネタバレなので、久々に続きを読むを使う。
 ネタバレなので、この先プレイ予定のある人は見ないほうが吉。
 とくに、こっちのルートはアルフレッドのかりそめの旅人たちと比べてネタバレするとつまらなくなる可能性があるし。あっちのルートは別にネタバレしても楽しいと思うんだが。
 九鬼先生が死後、一時の肉体を与えられ、同じようにかりそめの肉体を与えられ人生をやり直している一奈を追ってゴルドロックに行く話。
 実はこのシナリオ、恐らく正ルートと思われるすずルートにて果たすことの出来なかった復讐を九鬼が行うと同時に、あやかしびと本編ではどのルートでも救いのなかった一奈ルートでもある。
 一奈は本編ではどうしようもないDQNなのだが、そうなる原因がきちんとあったわけだ。父親に虐待され、母親はそれを止めず、姉は保身のために自分を見捨てたのである。一奈は小学生くらいの年齢の時点で、暴力と性的暴行を受けていたわけだ。その結果、火車の力に目覚め、父と母を殺害する。その後は、その力で思うがままに人を殺しまくるのだが。
 九鬼先生は、その一奈がどんなに改心しても、一奈は人を殺すだろうと核心している。なので、復讐に邁進する。
 さて、九鬼先生。魔法とか神々の武器とか存在するゴルドロックではさすがに不利だろうと思いきや。ただの人間のクセに八面六臂の大活躍。ゴルドロック最高位の魔法使いであるエルネスタを倒し、ミスティックワンを守っているFBIを助けを得たとはいえ出し抜き、前作あれほど活躍したコゼットをぶちのめして一奈殺しを敢行する。
 その結果・・・というのが、この話の肝。
 一奈は、かつての一奈ではなかった。記憶を失っているとかそういう生半可なものじゃなく、6歳当時、虐待を受ける前まで戻っていたのだ。そこで九鬼は苦悩する。大人の一奈そのものなら、記憶を消そうが何しようが、最終的に殺人鬼になる事を確信していても、まだ、子供で力に目覚めていない一奈がそうなるとはさすがに思えない。で、ここで、殺すかどうかの選択肢に・・・。
 このルートはそういった、一奈と九鬼のルートなわけだ。なので、ゴルドロック勢は実は完全な脇役。コゼットのみが前に出てくる。セルマもリックもほとんどちょっとしか出てこない。なにしろ、リックは九鬼と拳を交えることすらないのだ。そういう意味では脇役に徹していても、いい味出してた神沢学園生徒会勢に比べると、ちょっと不遇といえる。まあ、あっちと比べて、復讐というのがメインだからどうしても殺伐とした話になるし、ギャグも入れにくいんだろうが。
 その代わり、あやかしびと本編では最強の人物という設定の割りに悪役だったせいでいまいち活躍し切れてない鬱憤を晴らすが如く活躍する。魔法も武器もない、徒手空拳のみで、魔法使い倒すは、古代ののろいで肉体強化されているコゼットを倒すわ、あまつさえ邪神の武器エメス・トラブラムを持った敵すら素手で倒してしまう。その前にドラゴンやミノタウロスの集団もひとりで素手で倒す。
 この人強すぎる。
 トーニャルートで唐突に双七に負けたのは体調が悪かったとしか思えない。確かに、完全状態の九鬼なら、そりゃ、虎太郎にも勝てるだろう。まさにあやかしびと最強キャラ。こいつに勝てるにはもう魔人双七しかありえない。大好き何だが出ないんだろうなあ。
 そんなわけで九鬼先生の鬼神の如き強さを堪能するルート。同時に、彼の最後の選択は、双七の先生にふさわしい選択。復讐に狂う前の彼は、なんだかんだと、双七の人格の方向性を決定させる人間性を持っていたんだなあと納得できる。まあ、刀子ルートみてればとっくに納得できるんだが。
 そんなわけで九鬼先生の大ファンな俺としては大いに満足の行ったルートであった。ただ、このルートだけ見ると、確かに、バルドバレッドが好きな人には多少不満が出るかもしれない。まあ、本編で挽回してくれるさきっと。