天使と悪魔

 気がついたら1ヶ月くらい何も書いてなかった。
 ネタがないわけではないが、どうもブログの存在を忘れていたわけで。まあ、それくらい忙しかったってのもある。巡回もしてなかったし。
 で、久々に映画見てきた。
 ダヴィンチコードの続編に当たる天使と悪魔。
 原作では天使と悪魔のほうが先に出版されているのだが映画内ではダヴィンチコードの事件の後という時系列が示されていたので続編ということで。
 さて、原作はサスペンスの中に宗教と科学という題材が取り込まれているのだが、いかんせんボリュームがある。単行本にして3冊分だし。とはいえ、実は字がでかくて行が少ないので3冊分もないような気もするけれど。それでも140分の映画の中に収めるにはかなりのボリューム。ハリウッド的に90分超える映画は冒険とされるらしいので140分というのはかなりの長編となる。なわけで、大胆な話のアレンジと何を表現して何を削るかという取捨選択を製作側がするのだが。
 これが大胆なことに、3冊ある単行本の上巻に当たる部分の9割5分くらいがカットされてた。なので開始10分ほどで殺人事件防止の捜査に出てしまうロバート。急展開過ぎる気もするが。上巻では下巻でのロバート無双のための伏線があるんだが、それどうするんだろうと思ってたら、最後の部分も改変されてた。何しろ原作と死ぬ人と死なない人が違う。あと、珍しい改変とすると、原作は意外とハリウッド的で主人公とヒロインが事件を通じていい仲になるのだが、映画では逆にそっち方面がカットされてたりする。これはある意味新鮮。何しろハリウッドときたら原作では存在しないヒロインを作ってまで主人公とキスさせなければ禁固刑という法律があるもんだと俺はずっとおもってたくらいなんだが、その逆パターンって珍しくね。まあヴィットリアが原作では美人ではないが健康的な魅力的な女性に描かれていたのに対して、映画版ではかなり空気なおばさんにされてしまっているが。
 こんなけばっさばっさ削ったにもかかわらずそれでも時間は足りなかったらしい。肝心目玉になるローマ、ヴァチカン観光である教会めぐりもかなりはしょられる。おもに推理部分。原作ではロバートはかなり迷ううし間違えもするのだが、映画のロバートはほぼ独力でガンガン解決していく。たぶん、トムハンクス補正だろう。なのでずいぶんとさくさく話が進んでいく印象。もっともさくさく進むのがいいとも限らないのだが。何しろ原作にある溜めというものがまるでないのだ。なので、ジェットコースターのように話が進む。もっとも制限時間付きの事件だから本来ならこのスピード感のほうが重要かもしれないが。
 さっきいったように不要でアレンジすれば話の本筋を変えずに作れる部分はカットされているこの映画、ある意味徹底してるのは主人公の見せ場が二つも削られている。ひとつは暗殺者と一人で戦うシーン、そして最後のロバート超人伝説。超人伝説はそりゃ無理だろうと思いつつもまるっきり荒唐無稽でもないんだが。いちおう上巻で伏線張られてたし。
 ここまで読むと叩いているように思えるかもしれないが、実はそうではない。
 前作のダヴィンチコードもそうなのだが、改変していても売りとなる教会や芸術に隠された真実という部分は映像化されたことによってかなりわかりやすくなっている。前作でも本じゃいまいちピンと来なかった最後の晩餐の解釈とかは映像化によりかなりわかりやすくなった。今作もわかりにくい教会の儀式や情景、ローマの雰囲気などが映像化によってかなりわかる。人物がカットされ一人二役的なキャラもいるが、それでも大筋は原作に準拠しているし。
 この、天使と悪魔は映画版と原作が別物というわけではなく、二つで一つだと思うのが正しい気がする。どちらが先がいいかはなんともいえないが。というのも、この感想は原作を先に読んでたからで、原作読んでない人は別の印象を持つ可能性も高いしというか持つだろうし。
 だから、叩いているようでも個人的にはそれなりに満足である。
 トムハンクス、急激に老けた気がするなあ。