1018年9月

「はい、漢方薬です」
 豊代から湯飲みと粉末の薬を一緒に手渡される。鬼切丸はそれらを流し込んだ。
「む、む」
 家にいる時は能面のような顔をしている父親が目を白黒させるのが面白いのか、夕顔がニヤニヤと笑った。
「これは、二度と飲みたくないな」
「良薬は口に苦しと言いますので、我慢してくださいませ」
 豊代も苦笑しながら、父をなだめた。
「さて、今月は相翼院に向かおうと思う。二人とも準備をしろ。夕顔。お前は初陣だからな。豊代の言うことをしっかり聞いて、忘れ物の内容にな。くれぐれもイツ花まかせにするんじゃないぞ」
 とんでもないことになるかもしれないからな。とは、言わない。
「では、今月は、私とお姉ちゃんの二人で出撃ですね」
「ん、何を言っている。俺も行くぞ」
 イツ花、夕顔が当然、びっくりしたような顔をする。そんな中、豊代だけは平然としていた。
「当主さま? お体は治ってないのでしょう?」
「まあ、完全ではないが、支障はあるまい」
 支障どころか、本来の半分程度の力しか出せないだろう。優れた武具をもってすれば、まだ何とかなるという状態だ。
「夕顔は今の俺より弱い。その辺を考慮すれば、俺でもついていかないとな。それに、もう時間があまりない」
 2年に満たない寿命しか持たない、新京極の人間にとって一月を棒に振るのはあまりにも痛い。
「それ以上言って聞くような人じゃないですよ。それよりも早く支度をしてしまいましょう」
 問答になりそうな雰囲気を豊代が制する。
「んもう。わかりました。イツ花さん、手伝って」
 しぶしぶと夕顔が部屋を後にする。イツ花もそれについていった。
「まあ、助かったよ」
 反対されるだろうなとはうすうす気がついていた鬼切丸が、間を取り持ってくれた娘に感謝を述べる。
「お父様が無茶を言い出すのはいつものことですし」
 そういって、豊代は湯飲みを手にして居間を後にする。
「俺も準備するか」
 痛む体に鞭をいれ、鬼切丸は立ち上がった。体を覆う包帯には新鮮な血があちこちに滲んでいた。

「お姉ちゃんはお父さんがああ言うのわかってたみたいだね」
「ですね〜。お二人は初陣のころから一緒でしたし」
「ツーといえばカーという関係なのね」
「当主さまはあまり気配りのできる人じゃありませんから、豊代さまは自然とああいった役回りが身についたんでしょうね」
「長年連れ添った夫婦みたいな関係ね」
「ある意味それに近いかと。でもそれだと、当主さまはあちこちに愛人つくって子供こさえてることになりますね」
「隠し子って、それ私のこと?」
「そうですよ〜」
「む、まあ、お父さんはかっこいいし、女性に好かれそうな顔立ちだけど」
「あらあら、夕顔さまも当主さまの事・・・」
「む、お姉ちゃんが相手なら勝ち目はなさそうだからやめとく」
「そうかもしれませんね〜」
「ちょっと、何? 私よりお姉ちゃんの方が美人って言うの?」
「美人というより、豊代さまの方が色気があるというか」
 そう、豊代は最近、子供らしさが抜け、めっぽう色気が増してきた。そろそろ神々と交神してもよい年頃でもあるのだ。
「豊代さまとしては複雑な心境でしょうねえ」
「うーん。だろうねえ」
 二人はうんうんとうなずきながら世間話に花を咲かす。結局、先に準備に来たにもかかわらず、豊代に呼ばれたころにはまだ何も準備が出来ておらず、豊代に怒られる羽目になるのだった。


 当主がヘロヘロだが、防具がしっかりしてるので、健康度が56で出撃。まあ大丈夫だろう。今回から夕顔の初陣でもある。しっかり鍛えるために炎風ノ符をいっぱいもってく。ほんとは雷太鼓の符が一番良いんだが、売ってないし。
 行き先は相翼院。ここが一番稼げる気がする。
 炎風ノ符作戦。大失敗。邪魔で仕方が無い。
 と、いうのも、当主と豊代をかなり鍛えているため、このあたりの敵なら新人に攻撃が回る前に終わってしまう。結局ほとんど捨てた。
 お雫と陽炎が今回の最大の目玉。
 で、帰還して、見てみたら、二人がお雫を覚える。これは大きい。あと、当主は陽炎をあと1個レベルを上げれば覚えれそうだ。ほんとにお前初代かよ。