ケモノガリ

 引越し先でようやくネット環境が引けたので、とりあえずブログ更新。
 今回読んだのは「ケモノガリ」という本。俺がここでいつも一押しどころか百押しくらいしている「あやかしびと」のシナリオライター東出さんの初のオリジナル小説である。
 まあ、バレッドバトラーズの小説ならすでに2冊出してるけど。
 よくよく考えると、東出さんの小説を読むのは吸血大殲以来だなあ。バレバトの小説には手を出してないし。

 で、肝心の内容は、中二病中二病による中二病のための小説。
 
 ほら、俺も中二病だからあるんだが、妄想の中でなぜかクラスが化け物やら軍隊やらに襲われて超ピンチになった時、秘められた力に目覚めてそいつらを撃退するという妄想。それをそのまま小説にした感じ。
 にもかかわらず、なぜか最後は泣けてくる。何で泣けるかは読んでくれとしか言いようがないが、ダメな意味での泣けてくるではないので。
 
 まあ、昨今人を泣かす手段が登場人物を殺すってのが常套になっている世の中で登場人物の死による感動じゃないってのは貴重だと思うんだ。
 主人公の優しい嘘とそれを見抜く幼馴染のヒロインという関係がもうたまらない。

 隣同士の幼馴染ヒロイン、秘めたる能力を持った主人公、とお約束オンパレードの小説にもかかわらず、この作品は最後の部分でお約束から一線を画しているといえる。
 なので中二病じゃない人も是非読んでみてほしい。
 あと、この手の作品には珍しく、超能力やら魔法の類の能力はぜんぜん出てこなかったりする。主人公の能力は悪魔で戦って生き残る才能とククリナイフ、敵も基本は銃だったりするし。そういう意味でも珍しい作品かも。
 続編が書ける小説だとは思うが、余韻を残したまま終わるのが正解だと思う。
 あやかしびとの逢難ルートのあやかしびとエンディングの時も思ったが、こういったちょっと物悲しく余韻を残す話を書かせると、東出さんは絶品だな。この点のうまさだけは、鋼屋さんも奈須きのこも勝てないんじゃないかと思う。
 奈須さんもこの作品絶賛してたしなあ。