ゲームデザイン脳

 桝田省二さんの、書いた本。彼の経験やらゲーム作りの仕方なんかをまとめた本。どちらかというと、過去に公開してたコラムやらブログの内容を修正加筆削除したものをまとめた本といっていい。
 たびたびツイッターで出てくる美人編集者もそのあたりを読んだり目をつけたりしてオファーしたんじゃないかなあ。そういった意味では、自分のもっているものを常にオープンにしているスタンスが仕事を呼び込んだ形になってるんじゃないかな。
 で、内容そのものだが、桝田ファンからしたら、今更的な内容になってる。MarsのHP時代からコラムやら掲示板をのぞいていたので知っている内容の焼きなおしなわけなので新鮮味はない。MarsのHPは今でも見れるんじゃないかな? さすがにもうなくなってるかもしれないけど。なので、まあ、この本読まなくてもそちらのコラムを読めばだいたい同じ趣旨の内容が読める。というか、一部に関しては、こっちの本より詳しく裏話的なものが読める。
 とはいえ、この本自体はなかなか面白い。桝田さん独特の考え方であると同時に、その内容は基本的に納得できるもので、ゲームつくりのスタンスは相変わらずすばらしい。プレイヤーにやらせたいこと、もしくは自分が体験したいものをベースにどうやってゲームに落とし込むかという作りが桝田さんの基本スタイルで、キャラクターやら世界観は、そのやらせたいことの理由付けに過ぎない。リンダキューブみたいに、タイトルにヒロインの名前が入っているにもかかわらず、ヒロインは金出してる会社から「美少女が居ないと売れないから美少女出せ」といわれて作られたキャラだったりするし。しかもリンダが美少女かというと首をかしげる。いや、かわいい女であることは間違いないが、一般受けするの?
 俺屍の「短命の呪い」も「平安時代」も嘘をホントっぽくする為のギミックに過ぎない。このあたりをこなせているゲームってのは少ないと思う。まあ、スクウェアなんかとは対極的な作りだろうね。あっちはまず、キャラクターありき、世界感ありきだろうから。というか、俗に海外から侮蔑の意味も込められて呼ばれているJRPGのほとんどがキャラクターありき、世界感ありきだとおもうが。
 もっとも、桝田さん自身も自分でいっているが、桝田さんをメジャーに押し上げた天外魔境2はそれ以後のゲームと違ってキャラクターありきのゲームである。だからこの人はどっちも出来るんだろうなと思う。
 で、この人がほかのゲームデザイナーと違うところは、「ゲーム作りは仕事」「しょせんゲーム」と割り切っていることである。無論、ゲーム作りは仕事で金儲けの道具としか思ってない類の人はいるのだが、そういう考えを持ちながら売れるものを作ろうとする精神はすばらしい。元々広告代理会社でマーケティングをしてたのもそういった売れるものの分析につながっているんじゃないだろうか。
 近年の桝田さんはそういう意味では少々残念な気はする。勇者死すはやってないので*1なんともいえないが、俺屍以降は泣かず飛ばずな感じがする。まあ、本人も暴プリやら我竜の失敗を大いに自覚してるようなので、俺屍2で再度花を咲かせてもらいたいものだが。
 もっとも、固定の大会社に所属せずに、天外魔境2、リンダキューブ俺の屍を越えてゆけという名作を3作生み出しただけでもすごい。何が一番すごいかって言うと、天外2以外は単発作品であること。桝田さんは基本続編を作ることは無いし。天外魔境2のときは30歳で監督抜擢という状況だったし断れなかったんだろうなあ。その前に天外1を3ヶ月でパーツ寄せ集めで完成させるとか言う中祐司もびっくりの荒業*2の結果の抜擢なんだろうが。そのほかにも桃太郎伝説の戦闘ダメージの計算式*3やら、メタルマックスにもかかわっていたり*4している。
 しかし、ゲーム業界の重鎮とか呼ばれる存在になってもいい人のはずなのに、なんで細々とやってるのかなあとも思うが。
 最近、ツイッター俺屍2の続報が流れてこない。ひょっとするとダメなフラグなのかもしれない。なにしろSCEがあの状態だからなあ。PSPが赤字を支えている反面、PS2で今まで作られていたものがPS3に流れずにPSPWiiに言ってしまう状況になっている。そのPSPとて国内では売れてるが海外ではDSの足元にも及ばない。なにしろPS3PSPの世界総販売台数はGCと互角かそれ以下らしい。ぶっちゃけ、ソニー俺屍の版権手放してくれればDSで俺屍2だせるだろうに。グラフィックは別に3Dにする必要ないし。というか、むしろするな。

*1:携帯電話でゲームが出来ない性格なため

*2:この人も伝説的な荒業をやっており、かの名作ファンタシースター2は少人数で3ヶ月ほどで製作したという逸話がある

*3:さくまあきらが何も考えておらず、堀井雄二に電話して聞いたとか

*4:メタルマックスのCMのドラゴン退治はもう飽きたというキャッチコピーは桝田さんらしい。もちろんドラクエに対する皮肉であり、メタルマックスの製作中心人物である宮本さんは、かのファミコン神拳のゆうてい、みやおう、きむこうのみやおうである。ゆうていは堀井雄二。なので、桝田さんのキャッチコピーは恩師に近い堀井雄二をある意味こき下ろした内容だったりする。というか、この時代のゲーム業界の横の関係はかなり繋がっているよなあ。ゲーム黎明期の有名なゲームの製作者はだいたい繋がっている