ジョン&マリー 二人は賞金稼ぎ

 桝田省二さんの新作小説。
 桝田さんの小説は久々に買う気がする。というのも、夜鳥子は3巻で投げてしまい、ハルカも2巻を買っていない。
 そういった、桝田さんの小説の中ではある意味一番すんなり読めた本だと思える。最近ほとんどゲームを作っておらず、前はゲームデザイナーたまに小説家だったのが、小説家たまにゲームデザイナーとなってしまっている現状からか、順調に執筆を続けたおかげで小説はずいぶんと上手になった印象がある。というか、俺が知ってる範囲でこれ8冊目の小説だもんね。知らないのもあるみたいだからもう10冊近いわけだし。
 こういう言い方すると、桝田さんに失礼かもしれないが、シナリオライターとしての桝田省二、ゲームデザイナーとしての桝田省二は高く評価しているし、ある意味信者といっていいファンだが、小説家としての桝田省二に関しては首をかしげている。どの小説もそうだったが、一気に最後まで読もうというきになれなかった。
 ただ、今回の、ジョン&マリーはとってもすんなり最後まで読めた。
 じゃあ、お勧めの本なんですか? 面白いですか? といわれると、これまた首をかしげる
 今回は、かなりストレートなファンタジー小説で、かなりひねりの無い小説になっている。夜鳥子なんかは、内容はともかく設定なんかはけっこう凝っていた。まあ、ゲームデザイン脳の手法で落とし込みを行って書かれている小説だからだとは思うが。今回のジョン&マリーも同様の手口を使っているらしいが、そういう部分はあまり目立っていない気がする。
 で、ひねりのない作品のため、起承転結はしっかりしているし、破綻も無いが、盛り上がりも無ければ、ドキドキするような展開も無い。ただ、この手のファンタジー小説にしては珍しく、暴力で解決しないのは特殊といえるか。
 続編が出るのかどうかは不明だが、もろ露骨に続編に引くような作りになっているのもマイナス評価といえる。一応、これ単発でも終われないことも無いが、事実上男坂エンドとしか思えない。なにしろ、マリーのライバルになるベルが主人公たちの妨害しているということに主人公たちが気づいていないんだもん。
 なので、現時点での評価は難しい。
 最低条件として、続編が出ること。出れば評価が上がる可能性はある。出なければ、「俺たちの冒険はこれからだ」エンドで評価はダダ下がりになる。というわけで評価は保留にしたいかなあ。
 暴れん坊プリンセスもそうだし、マリーもそうなんだが、どこの世代に向けた誰のためのヒロインなのかが明確じゃない気がする。ラノベに属するんだから、若い子向けなんだろうが、今の若い子はこれで萌えるのか? 俺はそうは思わない。
 お約束も守っている、パターンも話の構成もある程度固まっている。でも突き抜けたものが無い。ぶっちゃけて言ってしまえばストーリーが多少破綻していても、もっと突き抜けたものがあれば問題ないと思う。きれいにまとめすぎた作品は特徴が無いのが特徴という作品にとどまってしまう気がするんだよなあ。
 オーソドックスなストーリーRPGであるはずの天外魔境2が似たようなキャラ主体のRPGが山ほど出ている現在でも名作として色あせないのは、突き抜けたものがあったからなんだよなあ。
 なんか、そういったものが荒唐無稽さが足りない気がする。その点ではまだ夜鳥子のほうが突き抜けた部分があった。あっちがダメだったのは、今言うのもなんだが小説としての出来がいまいちだったからだろう。キャラクターの造詣なんかはあっちのほうが良かった気がする。
 まあ、続編がでるとしたら化けるかもしれないし、化ける部分を期待するしかないかなあ。