いや、あなたの書いた小説より面白いですよ?

 桝田省二さんがコレを紹介してたので俺も紹介する。負け惜しみ言うようだが、桝田さんが紹介するより先に読んでるけどね。
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」まとめサイト

 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」

 タイトルからして、竜王DQ1のロトの子孫のやり取りのようだが、実は全然違ったりする。
 とにかく話の切り口が面白く、それだけで十分にやっていけるのだが、ファンタジー世界に経済学的なものを盛り込んでいるにもかかわらず、ちゃんと最後までファンタジーしており、それが比較的序盤から伏線として示唆されており、なおかつ、ほとんど破綻なく物語が進行してきちんと完結しているという、今の世にいる小説家の何割かは見習ったほうがいい作品といっていい。
 ファンタジー世界の経済ってどうなってるのさ、とか、ファンタジー世界に銃器が実際持ち込まれたらどうなるかとか、誰もが一度は考えつつも放棄するネタを見事に消化している。
 魔族はホントに悪なのか?というこれも誰もが抱く部分から、それぞれの正義があり、世に悪など無く誰もが己の正義のために相争うというテーマもある。
 きちんと、萌え要素もあり、恋愛要素もあり、ハーレム要素もあり、だからといって本筋はおろそかにならない骨太な作品。
 アイデア自体は誰もが考えたありきたりなものだが、だれも物語として実現したことが無く、そういう新しい部分を開拓している点だけでも十分にほめられる。
 地の文があまり存在せずに、ト書きのようなキャラクター同士の会話だけで成立している部分も読みやすさに繋がっている。ネット小説なので読みやすさは重要だろう。変わった部分として、キャラクター名が無い。勇者は最後まで勇者、魔王は魔王、といった具合にだ。登場時の肩書きがキャラクター名となっている。
 タイトルだけ見ると、魔王と勇者が主人公のように見えるが、実は多くの人物が主人公格といっていい。どちらかというとそういう部分ではFF6に近い。まあ、悪役側もかなり綿密に書かれているので、RPGと同列には語れないのだが。

 桝田さんもかなり面白いと高評価を与えているが、いっちゃ何だが、桝田さんが書いてきたどの小説よりも面白いと思う。
 思うに、小説家はみだりに他の小説の評価はしないほうがいいんじゃないかなあと。良くも悪くもブーメランになって帰ってくると思うのだ。
 そんなわけで一番気軽な立場は、俺みたいに作品を作るわけでもなく、ただ無責任に批評する立場なのである。

 この魔王と勇者はホントに面白いので、読むことをお勧めする。