ケモノガリ2

 よもや続編が出ているとは思わなかった小説の2巻。
 いや、どう考えたって1発ネタだろう? これって。
 しかも前作より分厚くなっているし。
 内容は、前作と違って主人公側がリベンジしに行く内容なんだが、前作もそうだが、この作品の徹底しているのは敵が本当に徹底して反吐が出るほどの悪だということ。一切の妥協なく、一片の慈悲もなく、ただただ悪である。
 そんな悪にもてあそばれる人々たちの一筋の光明が、ただただ人を殺して生存するという能力だけに特化した少年。
 で、この作品の悪は、娯楽のためにマンハントをするクラブという組織なのだが、彼らにとっては、生死に関することはすべてがエンターテイメント。前作では主人公の覚醒は彼らにとってのアクシデントだったが、今度はそのアクシデントですら彼らのエンターテイメントに利用する精神がすさまじい。主人公がどれほど憎悪にまみれようとも、その憎悪すら娯楽の対象に過ぎない。言ってしまえば、彼らは殺されることすら楽しんでいるのである。この話のラスボスなんかが特にそうだろう。
 逆に、この作品、悪がモラルや人格から超越しちゃった快楽殺人集団(自分の死も含む)になってしまったため(属する人間、全てではないけど)前作にあった、逆転に対する爽快感は薄れている。
 前作は、厨二病展開、主人公覚醒、大逆転、そして切ない別れと、エンターテイメントとして一種完成していたのだが、今回はその中から爽快感が失われている。ただでさえ血なまぐさい話なんだから、これを画策した黒幕くらいは、溜飲を下げるくらいみっともなく惨めに死んでもらいたいのだが。しかも前作以上にえげつない展開が繰り広げられるものだから、ただただ理不尽のみが提示される。主人公がどれほど超人的に活躍しようとも、救えないものが多すぎる、そして敵はある種諦観のように死んで行き、さらにその憎悪すら楽しみの糧とする存在が表れ、そして主人公より格上がゾロゾロいるとか言う話になってくると、もはや、最初のコンセプトから離れちゃってるんじゃないのといいたくなる。今回の話じたいは完結しているものの、次に続くという引きがあるため、こういう展開になったんだろう。この溜飲が下がるのはこの話が完結するときか。ただ、東出さんの作品だから、溜飲下がるような展開にはならないかもしれない。バレッドバトラーズもエヴォリミットもラスボスだけは微妙だったんだよなあ…。
 面白い作品だったが、前作と比較すると、やっぱ蛇足だったかなと思う。
 正直、これ書くなら、あやかしびと逢難編の続きを小説で展開してくれたほうがうれしいんだけどなあ・・・。
 まあ、3巻までは買ってみると思う。そこで完結すりゃ良いが、続くようなら、3巻の内容次第かな。正直、1巻はお勧めするけど2巻はお勧めできないかもしれない。